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木曽桧と漆

 

・磨けば光る家

 

身の回りからの素材調達

 

地域の技術を生かす

 

山と水の循環

 松本の平らにある本棟造りの家は、屋根の勾配といい、踏ん張りといい、日本の家屋の中でももっとも誇れ

るものの一つです。戦前までは、職人たちが競い合って、そうした立派な家屋をつくったものでした。

 

 現代の生活から考えると、そういう家はすきま風が入って、内も外もたいして変わらない、不便な家かもし

れません。最近では、「高気密・高断熱」が求められるようになってきました。しかしそれに伴い、室内空気

汚染(シックハウスともいわれます)が問題となっています。やはり人間は呼吸をして生きている以上、空気

がきれいでなければ健康は保たれません。朝起きてから長い時間を過ごし、眠りにつく場所が人間に一番いい

状態でなければいけません。

 

 健康のためには、木材や、他にも天然素材の製品をどのくらい多く使っている

かが大事です。昔の家は土壁で、それによって調湿性もありました。また障子には和紙が貼ってある。壁や床

などの内装材には無垢材を使い、仕上げはできれば漆塗りで、漆でなくても渋や、また亜麻仁油などの植物性

の油もあります。それらを雑巾で拭いて磨き上げる。そういう、「磨けば光る家」であることが、「人間の住

める家」なのではないでしょうか。

 

 新建材であるビニールクロスやPタイル、樹脂系塗料といった工業製品

は、一定した成分・製法でつくるので、クレームはつきにくいですが変化もしません。どういう具合に製造し

たか、私たちには見ることもできません。たとえ見てわかったとしても、肌に触れてみれば、合成繊維よりも

、木綿の方が気持ちがいいのです。人を包むより大きな器である建物にしても、工業製品を使わない方が「人

間の住める家」により近づくと言えるでしょう。

 

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